L-Acoustics V-DOSC System No.9



6..システムのオペレーション

6.1測定の手順

V-DOSCシステムのチューニングとイコライゼーションは簡単です。いったん適正なセットアップができ、カバレッジが満足のゆくものであれば(第三章を参照のこと)、システムのイコライジングのための第三オクターブ分析(RTA)と、ディレー調整のためのTDSまたはMLS分析(必要な場合には)は十分です。カパレッジは非常に均質でなくてはなりません。これが達成されていれば3つのポイントでの測定結果も満足のゆくものでしょう: 一個所はオーディエンスエリアの近い部分、一個所はミキシングポジション、そしてもう一個所はオーディエンスエリアの後部です。イコライゼーション作業に入る前に、周波数レスポンスの全体的な曲線が均質であることを確認しなくてはなりません。

測定結果を正しく理解するには、いくつかの落とし穴に注意する必要があります。いくつか典型的なものを挙げてみましょう:
* 一つの音源の測定には意味があります。同時に同じ信号を放射している二つの音源を測定すると、干渉を生じさせ、周波数レスポンスを変えてしまいます。
このような場合にはRTAディスプレーは誤解を招きます。
 アナライザーによっては(たとえばSound TechnologyのRTA1など)、相関関係の無い二つの独立したピンクノイズアウトプットを持っているものがあります。
これを使えば、上記のような落とし穴にはまることなく左/右のシステムの測定を同時に行うことができます。
* 標準的な1mから2mの高さのスタンドに立てたマイクの場所は、低/中城の周波数レスポンスディスプレーにディップ(くぼみ)を生じさせます。これは直接波と、数ミリセカンド遅れてきた床面からの反射波の間に起きた音のキャンセルが原因であることが考えられます。この周波数レスポンスに見られるディップはシステムが原因ではないので、イコライゼーションを行ってはいけません。
マイクを直接床においてもう一度測定を行い、結果を比ぺてみれば確認することができます。音源とマイクの間で幕のように作用している物理的障害物がない場合には、床に置いた方が良いでしょう。

床面が吸収素材(オーブンエアの場合には芝生など)の時には、現実にはない高域のロスもディスプレーされるかもしれません。
* 同様の理由から、反射表面の近くにマイクを置くことは避けてください。
* コンソールで測定した結果が誤解を招くことがあるので、サブウーハーシステムのイコライジングは最も注意を要する部分です。詳細な手順を以下に説明します:

a)リアルタイム分析測定
上記の落とし穴を念頭において、次のように作業を進めます:
1) コンソールのレベルで、かつ左右のアレーから同じ距離のポイントで、左右のレスポンスを比較します;チャンネル毎に確認してゆき、システム全体をチェックします。レスポンスのばらつきは1d8以内に抑えなくてはなりませんが、高域においてはそれよりも多きい差異(2dBないし3dB)が許容可能です。
2) 片側から、全体的な音のバランスをチェックします。コントロールユニットメモリの中から一番良いパフォーマンスを見せたものを選びます。注意してください!! 一番良い周波数レスポンスとは、20Hzから20kHzまでのフラットでストレートなラインではありませ! 結果を記録し、それをメモリにストアします。
3) 左右が同じであることをもう一度確認し、左+右のレスポンスの和を記録、ストアします。
4) 同様に左、右、そして両方の和をオーディエンスの最も近い部分で確認します。
5) オーディエンスの後部で同じ事をチェックします。オープンエアの場合には風がそれほど強くなくても測定に影響を与えるため、この作業は難しいかも知れません。
6) 記録した和を、コンソールで測定した同じデータと比較します。アベレージ(平均)のためにイコライジングを始めますが、この時コンソールの測定の方をより重視します。(平均するときには二倍にします)
7) サブウーハーの電源を入れます。始めにサブウーハーとメインアレーとの間のディレーを調整します。これはRTAでもできますが、MLS,TDSまたはSIMを使った方がずっと簡単です。まずマイクをコンソールの所、またはコンソールとオーディエンスの最後部との中間点で左右のアレーから等しい距離の場所に置きます。そしてメインアレーとあちこちのサブウーハーの場所との距離の差を幾何学的にチェックします。幾何学的に測定されたディレーをD2040(今回はヤマハのD2040を例にしてます。)で補正します。
8) メインアレーとサブウーハーに同じ(測定した)レベルでピンクノイズを送ります。そして一緒にスイッチを入れます。すでに設定されている(7) 幾何学的ディレーを+/-5ms(1.7m)変更します。するとSPLの差が大きくなります。ディレーを測定された中で最大のSPLに合わせます。ディレーを変更してもSPLに大きな影警が出ないようなら、それはサブウーハーのクロスオーバーセットアップが正確でないということです。その場合にはモードを変えてください。(6.2aを参照)
9) サウンドエンジニアの希望に従ってサブウーハーのレベルを調整します。
10) 特に125~250Hzの帯域に焦点を合わせてEQの調整を最終的に決定します。

b) SlM,MLS,TDS測定
この測定手順は前述のものと同様です。インスタレーションは増えますが、こちらの方が正確です。EQ調整はRTAアナライザを使用して問題なく行うことができます。
しかしETCディスプレイは測定/調整の時間と正確度という両方の意味でディレー調整の究極のツールであり、複雑なサウンドシステム(特に多重音源の場合)のセットアップには必要なものです。
注意: サプウーハーチャンネルのETCカーブを測定する際には、クロスオーバーのフィルタリング機能は無視してください。その方がタイムレゾリューションが良くなります。

6.2 主観的リスニングと名目上のレベル

a.) 音のバランスと音楽のプログラム
全体的な音のバランスは音楽のプログラムと、平均化したSPL(Leg)によって違ってきます。周波数レスポンスは、すべてのプリセットにおいて30OHzから4kHzの間はフラットです。それより高い帯域では、プリセットによってOdBから-6d8の間で異なるかすかなロールオフが起こります。40Hzから160Hzの間では、反響とアレー間のカップリングの結果として10d8ほどの自然のブーストが起こります。実際には160Hzと300Hzの間ではカップリングと反響で、部屋がイコライゼーションを引き起こします。このほかのイコライゼーションはすべてエンジニアの主観的な選択によるものです。大規模なロックコンサートの場合の一般的なレベルは105d8A(A weightingcurve/A重み曲線)、120d8SPLです。問題を起こすことなくこのレベルを実現するには、ローエンドを上げるしかありません。d8A Leq. を上げてしまうとオーディエンスに苦痛を感じさせ、ついには違法行為となってしまうからです。レベルがもっと低い場合(たとえばクラシック音楽の場合など)は、従来的に"フラット"な音のバランスをこのように変える必要はありません。ハイレベルに達するのは瞬間的なほんの短い間だけで、ローエンドのブースとがなければLeq. は一般的にずっと低い(95dBAまたはそれ以下)からです。実際クラシックの演奏家の見地からすれば、低域が突出したレスポンスは許容されません。

b) レベルインジケーター
CAMCO DL 3000アンプは連続ゲインが+32dBです。最大出力レペルはインプットに+4dBで信号が入力されているときに得られます。D2040のインプットのLED-18dBに相当します。"名目上のレベル"では、D2040のインプットLEDは-18dBと-12dBの間を表示しています。それよりも高いレベルではアンプのリミッターが作動し、アンプの"クリップ" LEDが点灯します。

c) サーマル(熟)パワーチャンネルディスプレイ
システムにとって最も厳しい条件となるロックのライブ演奏の場合には、所定のプリセットでのシステムの各コンポーネントのエネルギーの数値を求めることができます。計算は、コンソールのアウトプットで登録された通りのスペクトラム/エネルギーのレスポンスの、長い演奏時間の間の総和を出すことによって行います。これはコンソールの所でマイクを使って測定した、一般的なアコースティックレスポンスカーフに関して行います。(aを参照) 各チャンネルの実際のニ一ズはNEEDSの欄に、おのおので供給可能なエネルギーはAVAILABILlTYの欄にリストアップされています。値はトータルが100%になるように正規化されています。結果の一例がここに挙げでありますが、これは野外フェスティバルで、V-DOSCエレメントをメインPAとして48、その他にSB218サブウーハーを20使用しています。オーディエンスはおよそ15万人です。

NEEDS
AMP.power
AVAILABILITY
SUBWOOFER CHANNEL
42%
800W
40%
LOW CHANNEL
36%
700W
35%
MID CHANNEL
19%
400W
20%
HIGH CHANNEL
3%
150w
7.5%


 今回は、システムオペレーションについて書きました。システムプランを終え、現場でのチューニングとイコライゼーションの方法です。実際やってみないと分かりにくい点があると思いますが、どうゆう考え方で行ってゆくかを理解していただければと思います。

また、デジタルチャンネルディバイザーとして主な機器のパラメーター資料が必要な方は、ベステックオーディオ(株)に問い合わせいただければと思います。
 最近の現場では、XTA Electronics DP226が主流となっているみたいです。

 上記の関して分からない点は質問をお願い致します。

次回は、仕様について説明をしたいと思います。

 次回を楽しみに!!


上記の貴重な資料は、ベステックオーディオ(株)からの提供です。

より多くの人達がこのSYSTEMを理解して頂ければ幸いです。

貴重な文献に対して感謝いたします。有り難うございます。




資料提供先

ベステックオーディオ株式会社
〒130 東京都墨田区緑4丁目25−5 TEL03−5600−3685 FAX03−5600−3687


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