Comb Filtersについて



1.0 Comb Filters

1.1 Introduction
 Comb Filterについて皆さんはどのような認識をお持ちでしょうか?
 名前だけは聞いたことがあるとは思いますが、詳しいことが分からないのが現状かと思います。音響の専門誌の中に時々、ドップラ効果(Doppler Effect)と言う名前を聞いたことはないでしょうか?
 ドップラ効果とは、音源が移動すると、実際の周波数の音とは異なった音に聴こえる現象。例えば、電車が近づきながら警笛を鳴らすと、実際の音よりだんだん高くなるように聞こえ、遠ざかるときにはだんだん低くなって聞こえる現象です。
 類似する言葉として、ドップラひずみと言う言葉があります。これは、ダブルコーンスピーカで低い周波数と高い周波数の信号が同時に加わると、高い周波数の音は低い周波数の音に影響されて、ドップラ効果のひずみが発生する。シングルコーンの場合にも同様のひずみが発生することがあります。
 効果としてのドップラ効果は面白いですが、実際の音響現場で発生する場合には非常にやっかいな現象です。このやっかいな現象が生じる状況は後で説明しますが、今は、理論上ではなく、実際音として感じる現象を理解してください。(音として感じ、イメージしてください。)

 Comb Filterとは何なのでしょうか?
 この問いにこれから挑戦しようと思います。お付き合いいただけるでしょうか?

 私たち音響に携わる人たちは、このComb Filteringを解消するために、色々と努力をします。その方法としてSPのマウント方法、EQの調整、ディレイ機器の使用などです。実際の現場で直感的にこのComb Filterを取り除くことをしているのです。

 Real-Time Analyzer(RTA)でこの現象を見るには、あまりにもお粗末なデータしか表示されません。全く分からないと言っても良いくらいです。(少し言い過ぎかも知れませんが、、、)また、この現象すら、理解されてないのは驚きです。
 Comb Filteringを解消することが、音場調整する上で非常に重要なことなのです。
 Comb Filteringの起きる状況は、典型的な4つのパターンで示されます。(Fig 1.1a)
 その結果は、全て同じです。

**図面の拡大は、図面を直接ダブルクリックしてください。**


 Comb Filteringを作成するメカニズムは、何なのでしょうか?
 例えば、1 msec のtime offset(Fig 1.1a)があった場合、実際には1000Hzのコム周波数でComb Filterが出来るのです。この関係を下記に示すと、、、

1/Time offset = Comb Frequency spacing
1/0.001sec =1000 Hz ** 1/周期 = 周波数**

 上記のようなシステムのレスポンスをFig 1.1b~dで示しています。

**図面の拡大は、図面を直接ダブルクリックしてください。**


 Fig 1.1bは、1 msecのtime offsetのある2つの信号を表示しています。見ていただければお解りだと思いますが、直接音の方が1 msec遅れた音より、レベルが高いのがお解りでしょうか? これは、直接音に比べて、反射音は壁などを経由して伝わってくるのでレベルが減少します。

 これらの信号を加算した時(Fig 1.1d)の最大の加算周波数は、1000Hzのコム周波数の整数倍数で生じていることが理解できます。また、位相を見ていただければ、分かりますが2つの信号間の位相関係が、360゜の倍数で生じているので、加算されているのです。最大のキャンセルは、加算の間の中間ポイントで起こります。この場合、500Hz,1.5kHz,2.5kHz,etc.
 これは、反射音の位相が180゜遅れる時に直接音との位相キャンセルによって発生します。
 Fig 1.1cは、直接音の特性と位相、反射音の特性と位相を示しています。反射音の特性で高い周波数において、ロールオフしているのがお解りになると思います。また、位相特性を見ることによって,位相特性は信号や合成とキャンセルが発生する場所を見られることでtime offsetを知ることが出来ます。位相特性が120゜の地点では、加算もキャンセルも無いのがお解りでしょう。最大のキャンセルは、180゜位相が遅れたときに生じます。

 もう少し、位相の特性を読みとる事について詳しく書きます。
 Fig 1.1dの位相特性を見てください。500Hz、1.5kHzにおいて、位相カーブが下から上へと移動しているのが分かると思います。これは、Fig 1.1cの反射音の位相特性を見ていただくと、-180゜(位相カーブが下から)地点から+180゜(位相カーブが上へ)地点へと移動している点に注目してください。これは急に+180゜に行ったのではなく、表示上、折り返しているので+180゜に行っただけで、実際は-180゜地点です。(お解りでしょうか?)つまり、-180゜の続きなのです。Fig1.1cのPhase convergennceと書かれた地点で-360゜(スクリーンの0゜地点)位相がずれたことになります。この地点で周波数特性を見てください。1kHzにピークが生じているのがお解り頂けるでしょう。このように位相特性を見ることによって、加算とキャンセル(ピークとディップ)を読みとることが出来るのです。
 これを見据えて、Fig1.1d(直接音と反射音が合成された特性)を見てください。周波数特性で、ピーク、ディップのポジションが位相特性と関連している事がお解りになると思います。また、周波数が上がるほど、振幅特性(ゲイン)において、リップルが減少していることにも注目してください。これは、結果として、高域のロールオフに繋がるのです。
 以上のことが理解できたでしょうか? 少し、ややこしい説明部分があって理解しがたい所もあったと思いますが、ご勘弁願います。(英文を訳しながら、自分流に書いたためです。)

 結論として、冒頭で"RTAでこの現象を見るには、あまりにもお粗末なデータしか表示されません。"と書いたのは、この為です。位相特性を見ることによって、周波数特性の変化の原因を見つけることが可能なのです。例えば、何の障害物のない空間(無響音室や野外)にSPを置いて測定したら、直接音だけの特性が表示されます。これでお解りだと思いますが、ホールなどで、SPを置いて、測定した場合、無響音室の特性と比べて、ピーク、ディップが生じるのは、壁や床などに反射した音が原因なのです。とかく周波数特性だけにとらわれますが、実は位相が密接に関わっているのです。

 音場補正するに於て、いきなりEQ補正するのではなく、この反射音が発生する物理要因をまず、解決をすることの重要性が理解していただけたと思います。(1つの方法として、SPのマウントです。なるべく、SPからの音が壁に反射しないようにマウントする。---この為には指向性のコントロールされたSPが有効になります。)

 以上でComb Filtersについての最初の説明を終えます。言葉足らずや分かりにくい表現があったと思いますが、少しでも理解をしていただければと思い、思うがまま書かしていただきました。乱筆乱文お許しください。



 今回は、Comb Filtersについての初文です。
 如何でしたか? 少しでも分かりにくいComb Filtersについて理解をしていただければと思い、書きました。あまり自分でも説明が上手くないと思っています。まだまだ、説明し切れてないところがあります。お許しください。

 これはお願いですが、、、分かりにくい点がありましたら、指摘及び質問をお願い致します。

 次回は、Comb Filtersの続きを書きます。

 今後ともよろしくお願い致します。




参考資料 Meyer Sound Design Reference for Sound Reinforcement(MEYER Sound Inc.)
     飯島 徹著 オーディオ用語辞典

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