スピ−カ−・システムにおける仮想点音源と位相制御の追求 NO.2


       ジョン・メイヤ−氏が語る
      ”メイヤ−・サウンド・フィロソフィ−”
                 訳 ロナルド・ハドリー


          コントロ−ル・エレクトロニクスの採用

プロサウンド:「メイヤ−」のスピ−カに採用されている”コントロ−ル・エレクトロニクス・ユニット”について説明して下さい(このユニットは、1.75”×19”のラックマウント型プロッセサ−で、チャンネル・フィルタ−アンプ、時間/位相補正回路、そして『メイヤ−』独自の”スピ−カ・センス・ドライバ−”保護回路なが、内臓されている)。

J.メイヤ−:「UPA−1」と「UM−I」は、両方とも同じ「M−1」というコントロ−ル・ユニットを採用するように作られています。その「M−1」プロッセサ−に関して話しましょう。それにはまず、パワ−アンプについての説明が必要です。
 ’70年頃に、私たちはパワ−アンプを含むパッケ−ジ・システムを作ろうとしたとき、個人のパワ−アンプに対する好みを採り入れようとしましたが、好みが千差万別だったので、パワ−アンプが入っている完全なシステムを作る計画はやめました。その代わり、信号検出回路が入っているシステムを作ることにしました。信号検出保護回路というのは、パワ−アンプの状態を検査するプロセッサ−のことです。これがあれば、ひとつのメ−カ−のパワ−アンプに限定せずに、その選択を個人の好みに任せられるので、より柔軟性のあるパッケ−ジ・システムにすることができます。

 「メイヤー・サウンド」でもパワーアンプの製作を行っているのですが、他のアンプに較べて音質が良いとか、耐久性があるとか、,,また、環境条件(暑い所、寒いところ)など
温度に関係なく良い音質のアンプが選択できるようなコントロール・システムを作ることにしました。それが信号検出回路を開発する動機でした。プロセッサーがシステムを監視するので、スピーにおいて、複雑な電子回路を採用しており、フリー・パラメーター、例えば周波数特性とか、クロスオーバー・ポイントなど電子的にコントロールできるもの全てを電子回路部分に移しています。そして、電子的にコントロールできない働きは、スピーカ部分で行っています。
 例えば、保護機能は電子的な部分でよりうまくコントロールできるので、そちらへ移しました。ですから「UPA」の場合は、基本的に、初めからこれらふたつの部分を結合して働く製品として、設計・開発したのです。その作り方は、当時のプロオーディオ産業に存在しなかった新しいものでした。
 当時作られていた電子回路の多くが、質と耐久性において劣っていたので、皆、電子回路の導入を恐がっており、私たちにとって大きな障害となりました。ですからこのプロセッサーを作るにあたって、信頼できる技術を開発しようと決心し、テストの細かい手順を決めて、設計の目標を定めたのです。
 そして、保護対策として、電子回路部分の故障率を年間の平均で0.5%を越えないようにする、という会社の方針をたてました。結局、失敗率はその半分にもならなかったと思います。このことは、スピーカ・システムにおける電子回路の導入が、新たな問題にはならなという概念を人々に与えました。
 実際、このプロセッサーの信頼性はとても高いものです。例えば、オペアンプに亀裂がないことを確かめるのに蒸気をあてたり、プロセッサーを水に浸してから乾かした後、正しく作動するかをテストしたりします。私たちは製品の信頼性をとても大切にしているのです。

プロサウンド:コントロール・エレクトロニクス・ユニットで採用されているフィルターの種類に関してはどうですか。

J.メイヤー:フィルターに関しては、クロスオーバーとスピーカーの位相補正のために、オールパイ・パス・フィルターというものを採用しています。

プロサウンド:フィルター・スロープは24dB/octですか。

J.メイヤー:スロープは互い違いになっていて、私たちが使っているクロスオーバー・スロープは、2次(−12dB/oct)と3次(−18dB/oct)のものです。スロープ特性は、必ずしも高いものが良いわけではありません。その方が、位相補正がより簡単になります。私たちが注意しているのは、システム全体の特性です。
 スピーカーにも”フィルター特性”がありますので、全てを加えるとスロープの傾斜がかなり高くな
ります。つまり、スピーカー側の2次の”フィルター特性”と、電子回路側の3次フィルターを合わせると、全体では5次のフィルターを使っていることになるわけです。
 しかし、各部分を分析すれば、一方には2次と4次フィルターに関するエンクロージャの問題、他方には2次と3次フィルターに関する電子回路の問題があり、分けて考えれば両方ともより簡単に見えるわけです。しかし、私たちがつねに気にしているのはシステム全体の特性なのです。

J.メイヤー:「MSL−3」のトゥイーターは前方に出ているので、「TC−3A」が必要になりますが、かなり高いことは確かです(笑)。これは完全にアナログ・フィルターだけで行われています。
そして、ディレイは8kHz〜16kHzまでの間で、約1.1ミリ秒です。この製品はオプションですが、クライアントが皆好んでくれるようなオプションではありません(笑)。(TC−3A:トゥイターが前方に取り付けられているので、それを補正するための機器)
 昔のおもしろい実験を思い出しますが、位相の問題がどれほど繊細なものであるかを初めて調査していたときのことです。「JM−3」のキャビネットでは、ホーンよウーファーが同一面上に並んでいるのですが、ホーンが長いのでトゥイーターはホーンより約1ミリ秒前方に付いています。そこで私たちは、BBD素子のディレイ回路を採用しました。
 この回路は、スイッチでオン/オフができるようになっていて、約120kHzのクロック・スピードで稼働しています。そして確か、1ポールの位相補正による8次のアリアッシング・フィルターを採用していたと思います。技術的にかなり高度なものでした。とにかく、ディレイをオン/オフすることによってトゥイーターの相違を聴くことができたのです。
 また、トゥイーターに関しては、位相補正の他に音量レベルも変えられるようになっていました。そして、比較試聴の結果、次のようなおもしろい事実が分かったのです。補正をしていない状態では、トゥイーターの音量に対して、試聴者の意見はさまざまに分かれました。しかし、トゥイーターの補正が正確になるにしたがって高域周波数特性に対する彼らの意見は、より一致するようになったのです。このテストによって、正確な位相補正が、音のブライトさと鈍さの感じ方に大きな影響を与えることが分かりました。
 たいていの人は、トゥイーターが前に出ている状態の音を好みます。それはブライトではっきりとした印象を与えるからです。ところが、オペラの人々はその状態の音を嫌いました。声の構造が変わるように感じたからです。このため、「TC−3A」はオプションにしたのです。私たちは、トライアンプと言う方法を採らないで、「TC−3A」を試験的に製作したのです。
 クライアントはトライアンプ方式にして、ディレイを入れるように望んでいした。私自身もそのテストに参加して、「TC−3A」のテストの結果、彼らは毎回、はっきりと「TC−3A」を通した音を選びました。テストで使用した音楽ソースは彼らが持ったきた「F−1」に録音された「パウ゛ァロッテイー」の曲でした。
 このような微妙な違いを大切にしてくれる人がいるということは、私たちの励みになります。現在、「TC−3A」を「M−3」に内臓して、スイッチでオン/オフ操作ができるようにしようと考えています。 (上記によりM-3Tが開発されましたが、後にMSL-3が2WAYになり、必要無くなりました。)

 最初の方にAMP内臓タイプを検討していたが、好みが千差万別より断念したと有りますが、現在では、パワードタイプのSPが主流になっています。

 MEYERのSPが、時代と共に変化してきてることが、良く分ると思います。

 次回に続く!!


**文章が、意味不明な部分が有りましたら申し訳有りません**


上記の資料が、古い為、現在では、常識の部分がありますが、再認識をして頂ければ幸いです。
また、上記の資料は、プロサウンドの記事を抜粋させていただきました。

貴重な文献に対して感謝いたします。有り難うございます。


**質問、感想等が有りましたら、ast@ast-osk.comまでお願いいたします。**


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