Earthworks特長とその使用法 No.3



ピアノ....

 ピアノの録音となると人それぞれ自分流の方法を持っています。クラシックの場合、マイクは楽器から1.5-3m位離してセッティングしますが、その理由はそれ以上近付くと音楽として一体感が損なわれるという理由からです(個人的には疑問ですがそれが慣例です)。他の音楽の場合、マイクはもっと近接してセッティングします。人によってはピアノの蓋を開けて60-90cmの位置にペア・マイクをセットするのを好みます。別のやり方は、一本をハープ左手の中央付近に、もう一本をもっと上の弦の上方ヘセッティングする方法もあります。演奏者が視界から隠れないようマイクを奏者の両側に立て、蓋を閉めるという方法もあります。生ピアノを拡声するのにアースワークスのマイクが効果的であるという意見もあり、その場合ピアノの蓋は閉める方法が一般的です。この巨大で変化に富んだ楽器から希望通りのイメージを得るにはマイクのセッティングを色々実験する必要があります。
 「フロリダ州立大学が所有するWilliam Dowd社1975年製造のハープシコードを録音する機会に恵まれた。取り敢えずTC40Kペアマイクを60cm離し、弦の上10cmの位置にセットした。AKGヘッドフォンでモニターしながら5オクターブ全域をカバーできるように若干の手直しをした。マイク真下にある弦と端にある弦との音量差を心配したが全く自然な音が録れたので驚いた。まずい事に他の場所でジャズのカルテットが練習中で、スタジオではなかったためかなりピアノやドラムが飛び込んできてしまった。ピアノは影響なかったがドラムは問題だった。そこで静かな時を見計らって録音を行ったが、後で再生してみるとスネアやキックが時々聞こえる程度でアンサンブルとして聞こえることはなかった。弦に十分近接させ蓋で隠れるようにTC40Kをセットすれば余計な回り込みを感じさせず、殆ど問題のない録音ができた。」....by Jim Miller

他の弦楽器類...
 マンドリンやバンジョーはギターと同じ方法で0Kですが、他の方法も試してみることをお勧めします。バイオリンやビオラは近接させると良いでしょう。バイオリンは近すぎるとギスギスした金切り音になり勝ちです(松ヤニが多すぎる?)、その場合は少し距離を離すか中音を柔らかくするため正面から軸を90゜外して下さい。チェロなら一本か二本のマイクを30-60cm以内にセッティングすることをお勧めします。コントラバスの独奏のように立ったものは1-2本のマイクを胴体から45cmの位置にセットして下さい。信じられない音が得られるでしょう。もし演奏者が動き回るようなら、マイクをスポンジで包んでブリッジの下側で弦の下方にセットしてください。ラップ・ダルシマーを録るときは、2本(または1本)のマイクを近接させてセットして下さい。ハンマー・ダルシマーの場合、2本のマイクを使い部屋の音も加えてバランスを取って下さい。ハープは、45cm以内に1本のマイクをセットするか、楽器正面30-60cmにペアでセットして下さい。これ以外の楽器の場合はお問い合わせ下さい。

ボーカル....
 基本的に無指向性マイクでボーカルを近接させて録るなら、ウィンドスクリーンかポップガードが必要です。ボーカリストに好まれ、現在の主流となっているのは、大型のダイヤフラムを持つマイクで近接効果を利用してボーカルを録る方法です。このような色付けを必要とするような声にとって、近接効果の無いアースワークスのマイクは不向きです。もしウットリするような素晴らしい声の持主を録音する機会に恵まれたら、その時こそアースワークスの出番です。美しい声をありのままに録るにはアースワークスが最適だからです。もしあまりにもリアル過ぎるなら正面からマイクを90゜外して下さい。こうするとボーカリストはエレメントに対して横向きに歌うことになりますが、正面に向けるよりソフトな声が録れるでしょう。
 使い慣れたマイクとアースワークスを同時に二本使って、ミックスダウン時にどちらか一方を採用したり、両者の音をミックスする方法もあります。あるエンジニアはSM58を持っていないと歌わない歌手を録音した時のエピソードを教えてくれました。エンジニアはその歌手にSM58を持たせ、モニターヘッドホンにはその音を返し、実際に収録したのは同じブース内に目立たない様に立てたアースワークスでした。その歌手は気分良く最高の演奏を行い、素晴らしい録音ができたということです。
 ボーカルにノイズマイクを立てると非常に勢異的です。バックコーラスの人達から離れたところにマイクをセットすると、コーラスの人達が本当に後方に居る様に録れます。

ジャズ、ポップスの生演奏....
 ステージ前面で出来るだけ近づけてセッティングして下さい。空間と条件に応じてマイクの間隔を広げ、できるだけ広がりの有る音像が得られるように試して下さい。ボーカルをPAしている場合、ボーカル・マイクを加える必要があるでしょう。PAミキサーから音を分けてもらえるなら、二本のアースワークス・マイクをノイズマイクとしてステージ真正面に立てミキサーの音に加えると良いでしょう。驚くほど精密さと定位感が改善されるでしょう。

クラシッククの生録音....
 クラシック録音の慣習はホールの最高の席での音を再現することです。通常これはソリストまたは小編成のアンサンブルから1.8-3.6m(またはそれ以上)離して無指向性マイクを二本、間隔を開けてセットすることを意味します。大人数の合唱やオーケストラなら、さらに遠く離してセッティングすることになります。アースワークスのマイクを使う場合、一般的な方法より近づけてセットすると他のマイクとは異なった音が拾え特徴が出ます。個人的に好きなのは、ソリストやアンサンブルと非常に近接させ、これとは別にペアのノイズマイクを加えます。このノイズマイクは遠く離すほうが効果的で、視界から外すほうが良いでしょう。
 「信じてもらえないかもしれないが、大ホールや教会に何本ものペアマイクを立てる必要は無くなってしまった。最終的には明瞭で濁りの無い合唱とオケが録れた。私もマイクは何種類も持っているがTC40K を楽器、ボーカル、ノイズに使ったところとのマイクよりもリアルだった。大好きなB&Kよりも良かった」…by Gerry Putnam, CederHouse Sound & Mastering

リハーサルと本番....
 録音のリハーサルを体験することは、特にボーカリストにとって大変勉強になります。クラシックの声楽(器楽)を志す学生にとってアンサンブルのバランス、タイミング、モデレーションの技術を磨くのに自分の音を正確に知ることが出来るアースワークスのマイクは最適です。ギグやリサイタルを録音しておけば、後目自分が聴衆の一人になったように自分の演奏を客観的に聴くことが出来ます。アースワークスのマイクは元の音に正直ですから奏者の才能を余すところなく捉えることが出来、失敗から学ぶことも多い筈です。

サウンド・リインフォースメント(SR).、.
 無指向性マイクはSRの現場ではハウリングの制約を受けます。アースワークスのマイクのf特が他のマイクより非常にフラットだからといってハウリングを起こし易いということはありませんが、無指向性である事には変わりありません。ここでは利用例を幾つか挙げましょう。ハウスの音場測定用としては明らかに好適かつ安価です。ドラムのオーバーヘッドのようにモニターを通らない音源なら、FOH(フロント・オブ・ハウス)ミックスの拡声に使うと非常に効果があります。音源によっては(ギターアンプ、キックドラム、スネア等)極めて近接させることが出来ますので音源の音を大きくしカブリを防ぎましょう。ピアノの蓋を閉め、アースワークスを近接マイクで使って拡声するPA技術者もいます。静かな楽曲の場合、DIから拾った音や、近接セッティングしたボーカルや楽器の音等はドライになりますから、ステージ上の演奏をノイズマイクで補ないウェットにするのも良い方法です。ライブ・サウンドはより活々とし、耳に馴染みのある音に変わります。ヘッドホン等でモニターするためノイズマイクを利用すると、ステージで実際に出ている音や客席で聞こえる音をモニターするのに有効です。驚くことにステージモニターのレベルが十分低ければ、ボーカルを拡声するのにも最適なマイクです。手持ちノイズは全く出ず、近接させた時に得られるレベルは驚異的です。


 今回で、このシリーズは最終回になります。無指向性マイク本来の良さを多くの人に理解をしていただく為に”その特長と使用例”と題して各楽器のマイク録りを紹介して来ました。これからも、無指向だからと言って、録音しか駄目と言う認識を捨て、どんどんPAでも活用してみては如何でしょうか?
 
また、こんな使い方ありますよ。とか、こんな場合どうゆう風に録ればよいのか?などの提案、質問もどんどん送ってください。待っています。

 アースワークスのマイクに関して、情報が入り次第載っけたいと思います。次回を期待しておいてください。
 長々と、お付き合い有難うございました。


 質問等に関しては、メールにて送っていただければと考えています。
 また、基本的に質問等及び解答に関してはオープンにしたいと思いますので、、、
 直接、トモカ電気株式会社さんに質問された事柄でもメールしていただければ、この場でオープンしたいと思います。ご協力をお願い致します。


上記の貴重な資料は、トモカ電気株式会社 飯嶋からの提供です。

デモ等の要望は、飯嶋さんへ連絡をお願いします。
 その際には、レポートを頂ければ幸いです。より多くの人達に紹介を致します。

貴重な文献に対して感謝いたします。有り難うございます。




資料提供先

トモカ電気株式会社 担当 飯嶋氏
〒101-0021 東京都千代田区外神田1-15-16 ラジオ会館6F TEL 03-3253-6528 FAX 03-3253-6519
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